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薄くても“中は本物”マランツ「NR1711」、人気AVアンプが次世代ゲームも見据え進化 - AV Watch

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NR1711

人気の薄型AVアンプが次世代に進化

オーディオやホームシアターは、まごうことなき「趣味の世界」である。「どの製品が良いのか」と聞かれても、音質や操作感の好みは人によって千差万別であるため、究極的には「実際に使ってみてあなたが良いと思った製品が、あなたにとって良い製品です」と答えるしかない。

しかしこのような回答は、特に「これからオーディオやホームシアターを始めよう」という人にとっては無意味かつ無責任なものだろう。それは重々承知している。そして前提条件を正しく設定すれば、万人にとって完璧とまではいかなくとも「これを選んでおけば間違いない」という製品は幸いにして存在するし、またそのような製品を紹介したいと筆者は常々考えている。

AVアンプというジャンルにおいて、そんな「間違いのない選択肢」として真っ先に挙げたいのが、マランツから9月中旬に発売される「NR1711」(9万円)だ。

NR1711に先立ち、まずは「NR」シリーズについてあらためて紹介しておきたい。

2009年に登場したシリーズの初号機「NR1501」は、高さ150mmを越えるのが当たり前なAVアンプのなかで高さ105mmというコンパクトなサイズで、さらに7chアンプを搭載するなど、エントリークラスながら一線級の機能と仕様を妥協することなく実現した画期的なモデルだった。

新モデルのNR1711も、高さ105mmと薄型だ

NRシリーズの「薄型でありながら本格仕様のAVアンプ」というコンセプトは徐々にユーザーにも浸透し、特に近年では支持が拡大。資料によれば、2016年に登場した「NR1607」から2019年に登場した「NR1710」では発売後10カ月間の出荷台数が3倍となり、さらにNR1710は発売以降、AVアンプ全カテゴリーで市場シェアNo.1だという。

また、AVアンプと同等の映像機器との親和性を持ちつつ、あくまでもステレオ2chに特化した「NR1200」も昨年の登場以来大きな人気を博していると聞く。いうなれば「変わったAVアンプ」として始まったNRシリーズが、10年の時を経て、エントリーからミドルクラスにおいて「主流」の地位を獲得したというのはなかなかに感慨深い。

前モデルのNR1710のユーザーのソース使用率を見ると、「TV」「HEOS(ネットワークオーディオ機能)」が「Blu-ray」を上回り、「Game」がそれに続く。AVアンプというと、本格的な環境で映画を見るもの=Blu-ray使用率が圧倒的ということになりそうなものだが、NRシリーズでは必ずしもそうなっていない。これは従来の映像ディスクメディアだけでなく、ストリーミングサービスやゲームなど、こんにちの多様化した映像コンテンツをしっかりと引き受けていることの証拠といえる。

前モデルNR1710の、ユーザーのソース使用率

また、NR1710は同価格帯の大型AVアンプに比べると明らかに2chでの使用率が高く、「テレビ/リビングを中心にしたシンプルなシステム」という需要の受け皿にもなっていることがうかがえる。

前モデルNR1710を、2chスピーカーで使っている人は23%。同価格帯の大型AVアンプでは7%なので、その差は歴然だ

かつては、「映像を楽しむならAVアンプ」「音楽を楽しむならピュアオーディオ」というように、コンテンツに合わせて導入する機材が峻別されていた感があった。しかし最近では、「AVアンプで音楽も楽しむ」「ピュアオーディオで映像も楽しむ」というような意識の変化が、ユーザーと製品の双方でみられるようになった(同じく「NR1200」はそうした変化が端的に感じられる製品である)。

NR1200

ピュアオーディオだからといって音楽しか聴けないわけではないし、AVアンプだからといって複数本のスピーカーでサラウンドを構築しなければいけないわけでもない。ステレオでもよし、サラウンドでもよし。それでいて大きすぎず邪魔にならない。どのような志向にも応え得る、AVアンプならではの多機能性を薄型サイズで実現したことによる対応力の高さが、NRシリーズの大きな特徴といえる。

そんなAVアンプ市場で独自の立ち位置を確立したNRシリーズの、現時点における最終進化形が、今回紹介するNR1711だ。

2chスピーカーと組み合わせて音を聴いてみる

「NRシリーズは2chでの使用も多い」ということで、NR1711の試聴はDALIのトールボーイスピーカー「OBERON 5」(ペア11万5,000円)と組み合わせ、テレビを中心とする2chのシステムで聴いてみた。繰り返しになるが、充実したセットアップガイドのおかげで、はじめてシステムを構築するユーザーであっても、スピーカーの結線などでつまずくことはないだろう。

DALIのトールボーイスピーカー「OBERON 5」
NR1711のスピーカーターミナル。色分けされていて、接続時に迷わないように配慮されている

まずはHEOSを使い、Amazon Music HDから何曲か音楽を聴いてみた。NR1711は現時点では未だに数少ない、Amazon Music HDに対応する本格的なオーディオ機器である。

RADWINPSが手掛けたアルバム『天気の子 complete version』から3曲目「グランドエスケープ」(48kHz/24bit)を聴く。空間に舞い散るように配された音の明瞭さが高度な立体感を生み、さすがはフルサイズというべきか、同曲の劇中サイズを越える大スケールの展開がストレスなく広がる様は快感の一言。ボーカルは実体感と透明感が両立しており申し分なしで、定位も揺らぎなくびしっと決まる。聴いていて実に清々しい。

上原ひろみ(「HIROMI」名義)のアルバム『アライヴ』のトラック9「ライフ・ゴーズ・オン」(96kHz/24bit)では、ピアノ・ベース・ドラムスの三者が強烈に存在感を主張し合う様をエネルギー感たっぷりに描くとともに、個々の楽器が滲んで混ざり合ってしまうようなことがない。ベースがメインをはるパートでも、重量感と適度な硬質感をもった低域をしっかりと表現できている。純粋なアンプとしての実力、駆動力の高さも大いに感じられる。

それにしても、CDのリッピングやダウンロード購入によって手元に音源を置いておく必要もなく、ストリーミングでロスレス/ハイレゾ音源を聴けるというのはなんとも素晴らしい時代になったものだと思う。決して「自分自身のライブラリ」の価値を否定するものではないが、ロスレス/ハイレゾ音楽ストリーミングサービスの存在により、多くの人が「より簡単に、よりいい音で」音楽を楽しめるようになったことは素直に歓迎すべきだろう。

なお、NR1711は「HEOS」アプリを使って手元から選曲と再生操作が行えるだけでなく、HDMI入出力を持つAVアンプとしての機能を活かして、再生中の音源情報を画面に大きく映し出すという楽しみもあるので有効に利用したい。

再生中の音源情報を画面に大きく映し出しているところ

映像コンテンツとして、『アベンジャーズ:エンドゲーム』の4K Ultra HD Blu-rayを再生。サノスの軍団とただ一人対峙するキャプテン・アメリカのもとに「左から失礼」と通信が届き、次々にポータルが開いて全宇宙からアベンジャーズが集い、全面決戦に突入する一連のシーンを視聴した。

今回のシステムはサブウーファーを用いない2.0chだが、「優れたステレオスピーカー」であるOBERON 5は真横にまで音が回り込む卓越した空間表現を聴かせ、極大のスケールと個々のディテールが同時に描かれる戦闘シーンを見事に音で描く。可能であれば視聴位置後方にもスピーカーを置いてサラウンドを実践してほしいとはいえ、優れたステレオシステムはそれだけでもじゅうぶんに素晴らしい映像体験をもたらすことの実例だ。

また、高域低域双方の伸びに余裕があるおかげで、戦場に迸る鋭利な音から大規模な破壊音にいたるまで満足度は高い。良い意味で刺激がありつつも耳障りな印象に転ばないのは、OBERON 5の美点とも言えそうだ。

試しにテレビ、LG「OLED65C9PJA」の内蔵スピーカーとも比べてみたが、ひとつひとつの音の立ち方、厚み、透明感はもちろん、左右だけでなく上下・前後も含めた空間の豊かさが完全に別次元だ。

さらに念のため、筆者所有のNR1608(NRシリーズの3世代前のモデル)でも同じセットアップ&コンテンツで聴いてみたが、NR1711との差は歴然だった。NR1608で満足できないわけではないにしても、NR1711ではスピーカーからの音離れの良さ、空間表現力、聴感上のFレンジなど、アンプとしての能力が明らかに磨かれているのが一聴してわかる。機能はもちろん音質面においても、例えばUHD BD登場以前のエントリークラスのAVアンプからのリプレースでもじゅうぶんに満足できるだろう。

Netflixやゲームもより楽しめる

テレビで直接Netflixを使い、eARC接続で何作品か試聴してみたが、やはりテレビのスピーカーとは次元の違う体験が味わえる。Netflixの音声はロッシーのため、多くの作品ではBD/UHD BDと比べて音質的に物足りなさを感じてしまう一方、『タイラー・レイク -命の奪還-』や『ウィッチャー』など、「はじめからNetflixで配信することを前提に作られた」作品はその限りではなく、下手なBD/UHD BDが裸足で逃げ出すほど凄まじい音が飛び出してくるケースもある。そうした作品を最大限楽しむためにも、「テレビの音」の強化の大切さをあらためて痛感した。

ゲームもプレイしてみよう。PS4 Proを繋いで『The Last of Us Part II』のオープニングシーンを一通りプレイしてみた。こちらも映画同様、真横までリアルに展開する空間表現と鮮烈な効果音がゲームプレイに底知れない緊張と昂揚をもたらす。そしてそれ以上に印象的だったのがキャラクターの「声」で、前作主人公のジョエル(渋い中年男性)が弾き語りをするシーンでは、アコースティックギターの素朴な音色とジョエルの厚みのある歌声が生々しく空間に広がり、大きな感銘を受けた。

さて、読者の方々もご存知の通り、今年はPSとXBOXの両陣営から年末にかけて次世代ゲーム機が発売される。筆者をはじめ、より進化したゲーム体験を心待ちにしている人も多いだろう。

次世代ゲーム機で一般に注目されるのはやはりグラフィック面とは思われるが、もたらされる進化は映像だけに留まらない。例えばPS5は「Tempest 3D Audio」という技術により従来のレベルを越える3Dオーディオを実現し、さらにそれをテレビのステレオスピーカーやヘッドフォンで楽しめるということが強くPRされている。大規模なサラウンドシステムを構築せずとも、より精緻かつ迫力あるゲームのサウンドを味わうことができるというわけだ。ゲームのグラフィックだけでなくサウンドの進化にも注目が集まる(そしてプラットフォーマー自身がそのことを強調している)というのは、「ゲームの“音”の楽しさ・面白さ」を声高に叫んできた筆者としても実に喜ばしい。

ただ、AV Watchの読者ならば既におわかりだと思うが、どれだけコンテンツそれ自体が進化しても、最終的にどのような体験が得られるかは、再生装置のクオリティにも大きく左右される。どれだけ「ステレオスピーカーやヘッドフォンでも精緻かつ迫力あるゲームのサウンドを楽しめる」といっても、「どんなスピーカーやヘッドホンを使うのか」ということの重要性が減るわけではないのである。

より良い再生環境を整えることは、PS5の3Dオーディオを最大限に楽しむことにも直結する。PS4のタイトルである『The Last of Us Part II』の時点で、NR1711とOBERON 5の組み合わせが聴かせた音は慄然とするほどの体験をもたらしてくれた。このシステムでPS5の3Dオーディオ対応タイトルを遊べば、さらに度肝を抜く体験が味わえるに違いない。

冒頭で「間違いのない選択肢」と書いたが、それは決して、妥協や諦めといった消極的な感情の産物にあらず。時代に適合する製品コンセプトとそれを実現する仕様と機能、そして「趣味に使うもの」としての本質的なクオリティを兼ね備えなければ、間違いのない選択肢とはなり得ない。そして、こんにちの映像・音楽コンテンツを楽しむうえで、まさにNR1711が間違いのない選択肢であることは疑いようがない。途切れることなく続いてきたNRシリーズの歴史や、近年における同シリーズの人気の高さもまた、その認識を補強している。

コロナ禍にあって「ステイホーム」が叫ばれて久しく、家で過ごす時間を豊かで充実したものにすることがかつてなく求められている。その意味では、映像・音楽コンテンツの価値は今まで以上に高まっているし、それらからより大きな楽しさを引き出すオーディオやホームシアターもまた然り。定額ストリーミングサービスの普及でかつてないほどコンテンツは豊富になったのにくわえて、時代の要請もある。オーディオやホームシアターに意識を向けるにあたり、今以上の好機はない。

そしてその際は、ぜひNR1711の存在も念頭に置いてほしい。これから始める人、もういちど取り組む人、その両方に掛け値なしにおすすめできるAVアンプである。

(協力:ディーアンドエムホールディングス/マランツ)

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