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<再発見!伊豆学講座>地域の文化財 過疎・高齢化で散逸の危機 - 東京新聞

学生ボランティアらが行う古文書調査=松崎町の旧依田邸で

学生ボランティアらが行う古文書調査=松崎町の旧依田邸で

 NPO法人伊豆学研究会は「地域に残る文化財を守る」ことを最初の呼びかけで起こした団体である。かつては北伊豆の旧田方郡域の町村が持っていた文化財保護審議委員たちの勉強会の場として、「田文協(でんぶんきょう)」という雑誌まで編集、発行していた。

 平成の市町村合併で、それまで維持されていた文化財が守られなくなるのではないか、との危惧から、委員だった人たちに集まってもらい、民間の後継団体として発足させたのである。

 根底はここにある。過疎・高齢化が深く根を下ろしている現在、地域の崩壊で文化財、とりわけ古文書など、蔵や家屋内に大切に保管されていたものがなくなり始めている。静岡県では、東日本大震災をきっかけに文化財レスキューという組織ができたが、これは災害から文化財を守るための組織。そうではなく、人の営みで文化財が散逸し始めている。

 これを避けようと、私たちは松崎町の旧依田邸で、散逸を免れた資料の調査を行った。大学生や、県内自治体職員のボランティアなどの協力で何とか踏みとどまろうとしている。

 伊豆は戦災に遭わず、高度経済成長期またはバブル期の開発に取り残されたため文化財の宝庫であった。しかし、現在は働く場所がないという理由で家を残してふるさとから離れて行った人が多い。「昔あの家にお邪魔して調査をさせていただいたのに雨戸が閉(た)てられていてのぞくこともできない。どうなっているのだろう。江戸時代の産業を知る重要な史料が残っているのに」とほぞをかむ思いをたびたびしている。

 地域が残っているうちはまだ見ている人がいるが、地域が消滅してしまうとそれもできなくなる。二〇一六年五月二十二日の本欄「限界集落」で取り上げた南伊豆町吉田はその後どうなったのだろう、確認しなければと思いながら今日に至ってしまった。

 吉田の北にある同町子浦も過疎・高齢化が進んでいる。弘化二(一八四五)年に八幡神社を残して地域が全焼する大火があった。しかし「風待ち湊」として復興を遂げ、昭和四十年代の民宿ブームまで非常に栄えた場所である。ところが、自動車交通の時代になり、陸の孤島と化してしまった。そして、人々は次々に子浦から離れて行っている。

 子浦では弘化二年以後のものは連綿と受け継がれてきた。地域が残らなければ、伊鈴川(五十鈴川)神社で演納される人形三番叟(さんばそう)もなくなってしまう。

 政府の進める働き方改革で定年が延び、市民活動やボランティア活動に取り組む人も少なくなっている。地域を残す活動に参加する人たちも減っているのが現実だ。高齢化社会は文化財を守る活動にも影を落としている。

 ふるさとを離れて高齢になっても働かざるを得ない人は、地域に、ふるさとに、帰りたくても帰れないのではないだろうか。(橋本敬之・伊豆学研究会理事長)

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