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博物館と文化財の危機(書評) - 日本経済新聞

岩城卓二・高木博志編 人文書院 2300円(税別)

岩城卓二・高木博志編 人文書院 2300円(税別)

観光立国の国家戦略のもと、2018年の文化財保護法改正をはじめ国や自治体が「文化財で稼ぐ」制度整備や施策を加速させている。本書は、この流れに警鐘を鳴らす歴史学者らが同年11月、京都大人文科学研究所で催したシンポジウムを軸にまとめた論集だ。

文化継承の担い手たる地方が過疎化や少子高齢化で衰退する中、地域活性化に文化財を活用すること自体に異論は無いだろう。ただし保存への悪影響を避けるのが前提条件となる。観光地のにぎわいと引き換えに傷つき、劣化した文化財は枚挙にいとまがない。

論者らが危惧するのは経済性重視の弊害だ。集客力や商品力の向上を優先する考え方は、地道に積み重ねられた歴史学や考古学の成果をなおざりにして、見栄えの良い物語で史実を粉飾したり負の歴史を隠蔽したりする危険をはらむ。戦前、神話や伝承に基づいて皇祖の聖跡や忠臣ゆかりの地を史跡に指定し、「国民道徳」を押しつけるのに政治利用された先例も提示する。歴史を「夢とロマン」だけで語ってはならない。

歴史遺産を継承する意義や、博物館本来の役割についての理解が社会に十分広がっているとはいえない現状については、関係者の反省と工夫も必要だ。とはいえ「稼げる、稼げない」を基準に単純に価値づけられるべきではあるまい。

むろん後生大事にしまっておきさえすれば文化財が保全されるわけではない。住民と行政と研究者が協働して古建築を維持したり、市民研究者を育てて史料研究に取り組んだりすることで、継承と地域振興を両立させる動きを紹介している。目指すべき活用策は何か。コロナ禍で博物館が一斉休館する中、観光する側の視点からも考え、活動再開に向け頭の準備体操をしてはどうだろう。

(編集委員 竹内義治)

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May 01, 2020
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