新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府が緊急事態宣言を出して初めての週末を控えた10日夜、福岡県久留米市の夜の繁華街「文化街」を歩いた。福岡県の小川洋知事は休業を要請する業種などの判断を13日以降に先送りしたが、自主的に休業する店が相次いだ。外出自粛要請を受けて出歩く人も少なく、街は閑散としていた。
午後7時、文化街を貫くメインの通りは、普段なら仕事を終えたスーツ姿の人たちや宴会に向かう集団が行き交う時間帯だが、人の気配は全くない。20メートルほど先で猫が「ニャー」と鳴くのが聞こえる。路地に入ると、ラーメン店やうどん店は軒並みシャッターを下ろし、休業を知らせる紙があちこちで目についた。
近くの「久留米やきとり有馬」は4月1日にオープンしたばかり。個室やカウンターなどに客が数組いたが、金曜にしては少ない印象だ。「昨年から準備してきたし従業員もいるから開けざるを得ない。こんなことになるなんて」と代表の男性（32）。今週、銀行に融資を申請した。「まだ常連さんもいないし蓄えもない。先が見通せない」。西鉄久留米駅付近にある系列店は既に臨時休業している。
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午後8時半。1958年から創業する老舗焼き鳥店は、早々と店じまいを始めていた。男性店主（78）は「人も通らん。緊急事態宣言が出たあたりからぱったり。開けとるだけで赤字よ」。それでも定休日の日曜以外は毎日午後5時に店を開ける。「こんな時も常連さんは来てくれる。せっかく来て店が閉まっていたら悪いでしょうが」。そう言って、しわが深い手で温かい梅昆布茶をくれた。
午後9時になっても相変わらず人通りは少なく、客引きとみられる男性陣も暇そうにしている。
ただ金曜の夜だけに、営業している店は前日よりは多いようだ。店内をのぞくと、少人数の客の姿も見える。
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雑居ビル5階のあるスナックは、店のドアを開けたままにして入り口にアルコール消毒液を置いていた。カウンターには客が2組。女性店主（52）は「今日はゴルフコンペの打ち上げが入っていたけど、キャンセルになった。従業員も1人に減らした」と話す。今週に入り、同業者は次々と休業したが、閉めるに閉められない店も多いという。「自粛ムードの中、店を開けると批判もされるが従業員の生活がかかっている。補償さえあれば、すぐにでも休業できるのに…」
午後10時、フィリピン人ダンサーのショーが楽しめるパブでは、まばらな客の前で女性たちが妖艶なダンスを披露していた。「彼女たちは国に帰りたくても帰れない。興行ビザの子たちは他の仕事もできない」。男性社長は力なく笑った。
休業要請はあるのか。補償や救済措置は受けられるのか。先の見通しがまったく立たない中、文化街を支えてきた店主たちは苦渋の決断を強いられていた。 （平峰麻由）
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April 12, 2020 at 04:00AM
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寂しく輝くネオン「文化街」閑散 久留米の繁華街の夜は… - 西日本新聞
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