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市民劇に郷土愛込め15年 市文化財団が運動の記録誌発行 - 東京新聞

市民劇運動の15年間をまとめた「わがまち川崎市民劇の記録」

市民劇運動の15年間をまとめた「わがまち川崎市民劇の記録」

 川崎市で2006年に上演が始まり、市民とともに積み重ねてきた演劇運動「川崎郷土・市民劇」の記録誌が完成した。東海道川崎宿の再建や多摩川などの治水を手がけ、「川崎の三偉人」の1人とされる田中兵庫(たなかひょうご)の評伝劇を皮切りに、南武線や日本民家園の誕生を巡る人間模様など、15年間に7作品を上演。川崎の魅力を掘り起こし、郷土愛をはぐくむ舞台にもなってきた。(石川修巳)

 記録誌は「わがまち川崎 市民劇の記録」と題し、市文化財団が5月に発行。編集委員長は、市文化賞を受賞した日本舞踊家藤嶋とみ子さん(76)が務めた。

 かつて「文化がない」とやゆされたこの地で、04年の市制80周年を機に企画されたのが市民劇だったという。市総合教育センター(高津区)の初代所長を務めた劇作家、小川信夫さん(93)が7作品すべての脚本を手がけた。

 これまで市民劇は2〜3年おきに上演。第1回の田中兵庫物語のほか、私財をなげうって多摩川河口に新田を開発した池上幸豊(ゆきとよ)、労働者として川崎に移住してきた沖縄の人たちの苦難や絆にも光を当てた。小川さんが「超満員だった」と振り返る「南武線誕生物語」(17年)をはじめ、7作品の平均観客数は3300人に達した。

 記録誌には台本や舞台写真、当時の劇評などを収録。編集主任を務めた関昭三さん(78)は「上演のたび、『川崎にこんな魅力があるなんて』という感想が多く寄せられた。当初はこんなに続くとは思わなかったし、これだけ続いているのは全国でもほかにない」と話している。

 B5判約250ページ、800部発行。2000円(税別)。問い合わせは、市文化財団=電044(272)7366=へ。

◆鍵は面白さと発見 劇作家・小川信夫さん

川崎郷土・市民劇の脚本を手がけてきた劇作家の小川信夫さん=多摩区で

川崎郷土・市民劇の脚本を手がけてきた劇作家の小川信夫さん=多摩区で

 川崎郷土・市民劇が毎回三千人もの観客を引きつけてきた鍵は「面白さと発見」にあるという。脚本を担当した小川信夫さん(93)=多摩区=は「芝居の面白さや感動がないとだめ。それに『川崎にこんな物語があったのか』という発見があるから、次は何かとワクワクするんです」と語る。

 市民劇は、公募の市民と演劇のプロがともに作りあげてきた。「素人芝居はだめだ、と何度も衝突した」と小川さん。「脚本も歴史の裏付けがないとだめ。その裏取りが大変で、取材に一年近くかかる」とも。

 川崎市教委で教育行政に携わりながら、児童劇作家の故斎田喬(たかし)さんに誘われて腕を磨き、子どものための作品を書き続けてきた。青少年向けの「かわさきヤングミュージカル」を創設し、二〇〇一年からの上演にこぎ着けた。

 そうした演劇運動の実践を、幅広い年代に広げたのが市民劇だ。「一本だけのつもりだった。これがウケちゃって、引き下がれなくなった」と振り返る。

 昨年上演された「日本民家園ものがたり」は、小川さんが「これだけは書き残したい」と手がけた作品だった。全国から京浜工業地帯に集まった労働者の「心の故郷」として、民家園が誕生した舞台裏の人間模様を織りなしたという。

 書きたい題材はまだあるけれども、「もうヨタヨタですよ。後進に道を譲りたい」と小川さん。

 今後の市民劇を担う人たちに向けて、最後にこう語った。「日常にある問題を市民と一緒に考えていく視点が必要ではないか。題材を見つけ、裏を取るのは大変だ。そのためには、川崎を愛してくれないとね」

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