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コロナ禍で揺らぐ価値観 暮らしの在り方見つめ直す 近藤加代子氏 - 西日本新聞

 経済発展に伴う近代化が進むタイで、住環境に着目した幸福度の調査を行った。高温多湿のタイの伝統的な住宅は高床式。1階部分のオープンスペースがリビングになっている家も多く、外に向かって常に開けている。一方、現代型の住宅はエアコン設置を前提に造られ、熱効率のために閉じている。

 伝統的住宅は1階に人が集まりやすく、住民との交流が自然と増える。現代型住宅ではエアコンの効いた家にこもり、テレビの視聴時間が長くなった。住宅の現代化で確かに幸福度は増す。しかしそれ以上に、木陰など屋外で過ごす時間や、近隣との交流時間が長い人ほど幸福度は高かった。

 福岡県の地方都市での調査でも、人との交流時間や地域参加が幸福度を高めるという結果が出た。経済的な豊かさは幸福の一つの要素ではあるが、人とのコミュニケーションも重要であることをこうした研究は示している。

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 時代の変わり目には「幸福とは何か」に光が当たりやすい。

 19世紀の英国では産業革命が起き、人々が地方から都市に流入。貧富の差が拡大した。公衆衛生も悪化し、感染症もまん延。貧しい人たちが次々に亡くなった。当時、英国で人間として扱われていたのは財産を持った人たちで、貧民に市民権はなかった。

 哲学者で経済学者のベンサムは、財産のあるなしにかかわらず人々の幸福は平等だと唱え「最大多数の最大幸福」の実現を訴えた。ベンサムの幸福論は、財産の増大、保護こそが政策の基礎とした当時の価値観を、公衆衛生の向上や福祉施策の充実へと転換させた。

 現代はどうだろうか。産業資本主義を進めた結果、環境問題など地球規模の課題に直面している。新型コロナウイルスの感染拡大も、国境を越えた人や物の行き来がかつてないほど進んだことによる。今までのやり方で本当に幸せなのか、価値観が揺らいでいる。

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 片道1時間かけて都市部の職場に通勤し、すし詰めになって働く。定時を過ぎても上司の顔色を見ながらサービス残業…。新型コロナウイルスの感染拡大は、そんな働き方や都市の在り方を見直すきっかけにもなるはずだ。

 緊急事態宣言を受け、各企業がテレワークを中心とした在宅勤務に転換している。技術革新が進み、場所にとらわれない働き方ができる環境も整いつつある。労働密度を下げながら生産性を維持する方向に今後変わっていくだろう。

 都市部への一極集中は地方の消滅危機を招いた。これからの日本は、職住一体型の地方での生活を目指すべきだ。大都市では築きにくい住民との交流や地域活動への参加が増え、人々の幸福度は高まるに違いない。

 (聞き手・久知邦)

◆近藤加代子(こんどう・かよこ) 1960年、山口県出身。九州大芸術工学研究院教授。専門は環境社会学。社会思想史も研究しており、個人の幸福を社会理論の基礎とした英国の哲学者ベンサムに詳しい。

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April 26, 2020 at 04:00AM
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