予想通り「異色の新星」ブティジェッジ氏が台頭
「だから言っただろう」というのは趣味ではないが、昨年4月2日の本コラム「異色の新星」で紹介したインディアナ州サウスベント市元市長(当時は市長)のピート・ブティジェッジ氏が、予想通り米大統領選民主党の候補者選びで台頭してきた。
「小さな田舎町の市長に何ができる?」とテレビで言い放った日本の外交問題の識者もいたが、「候補者選びの登竜門」とされるアイオワ州の民主党の党員集会でトップに躍り出て今や全国大会での指名に向けて爆進中だ。
その魅力や才能は昨年のコラムでも紹介したので、ここでは同氏が大統領になった場合どのような外交政策とくにアジア政策を打ち出すのかを探ってみたい。
ブティジェッジ氏は集会やインタビューで外交政策に触れることは少ないが、最近ニューヨーク・タイムズ紙やシンクタンクの外交問題評議会の質問に答えているのでそれらを参考に見てゆきたい。
トランプ大統領の外交方針との決別を明言
まず外交問題全般だが、「信頼と信憑性を回復し、同盟国との関係とパートナーシップを再構築する」とニューヨーク・タイムズ紙に答えており「アメリカ・ファースト」の号令一下同盟国との関係を破壊したトランプ大統領の外交方針との決別を明言している。
次に北朝鮮問題だが、クリントン元大統領が試みた核分裂物質の開発凍結を約束し核実験とミサイル発射を止めれば制裁解除を考慮するとしているが、その交渉にトランプ大統領のように金正恩総書記と個人的な関係を築くかという質問には答えていない。
また朝鮮半島からの米軍撤退の可能性については明解にNOと答えている。
中国問題についてブティジェッジ氏は態度を明らかにしていない。香港問題やウイグル地区での抑圧問題についてのニューヨーク・タイムズ紙の質問には答えを留保しているが、ロシアについてはウクライナや他の旧ソ連の共和国へ干渉を行えば米国はそれを敵対行為と断ずるとしている。
中東問題ではイスラエルとの関係を重視すると共にパレスチナ国家の建設も許容するという中立的な考えを外交問題評議会に答えているが、ニューヨーク・タイムズ紙が「トランプ大統領がエルサレムに移動させた米国大使館をテルアビブに戻すべきか」と問うと、NOと答えている。
こうして限られた情報から分かるのは、ブティジェッジ氏の外交政策は伝統的な民主党のそれに沿ったものだということだ。ただ同氏は志願してアフガニスタン戦争に従軍した経験があり、その経験から軍事行動については慎重な考えを持っているようで、昨年行った講演ではこう言っている。
「次期大統領は軍事行動について、これまでよりも一段階ハードルを上げて決定すべきだ。それも単独で軍事行動を行うには尚更だ。というのも単独での軍事行動は国益に直接関わることだし、代替手段もないからだ」
ブティジェッジ氏の通商政策は、中国問題でニューヨーク・タイムズ紙の質問に答えなかったように未定の部分が多いのかもしれないが、これからラストベルトの工業地帯やコーンベルトの農業地帯での選挙運動で明らかになってゆくだろう。
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【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン、図解イラスト:さいとうひさし】
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February 10, 2020 at 04:30PM
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