国立民族学博物館(民博、大阪府吹田市)の公開講演会が11月15日、東京・大手町の日経ホールで開かれた。テーマは「アニメ『聖地』巡礼~サブカルチャー遺産の現在」。アニメやマンガ、ゲームに描かれた場所を訪ねる「聖地巡礼」と呼ばれる現象を俎上(そじょう)に載せ、フィールドワークを基に文化人類学の視点からどう考えるか意見を交わした。
民博は毎年秋、東京講演会を日本経済新聞と共催しており、今回が20回目。
最初に民博の飯田卓教授が「遺産観光におけるバーチャリティ」と題して趣旨説明した。文化人類学は風土や歴史に根ざした生活様式を「文化」と捉え、調査研究する。一方、近年にぎわいを見せるアニメの「聖地」はバーチャルな世界を投影した現実の景観だ。
飯田教授は「これらはネットによるコミュニケーションが生んだ価値観に基づくコンテンツ。風土や生活、歴史的な価値から切り離されていることがある」と指摘。多様な価値観に基づいて様々な事物が「文化遺産」に認知される近年の傾向を踏まえた上で、文化遺産とは何かを問いかけた。
■住民と相互理解
続いて国立歴史民俗博物館(千葉県佐倉市)の川村清志准教授が「聖地巡礼のラビリンス」と題して講演した。映画のロケ地や小説の舞台を訪ねる旅は以前からあったが、地元主体で情報発信も一方的だった。2000年代以降に本格化したアニメ「聖地」巡りはファンが端緒となり、SNSなど双方向のメディアを駆使して主体的にコンテンツづくりに関わる点が特徴だ、と説明した。
川村准教授が紹介したのはアニメ「かんなぎ」の「聖地」とされる宮城県七ケ浜町の事例だ。ファンクラブのメンバーが神社の祭りなど地域の行事に積極的に参加。コスプレなど様々なイベント開催を通じて東日本大震災からの復興でも協働、住民との相互理解を深めた。川村准教授は「バーチャルな物語が生んだ関係性が新たなネットワークを生み、イベントや物語を再創造した」と説明。消費者が生産者となったことがカギになったと指摘した。
■中華圏との違い
民博の河合洋尚准教授は「アニメのある景観」と題して中華圏の状況を報告した。日本のアニメやマンガは中華圏の青少年層に広く親しまれているが「日本と同様の聖地巡礼はまだあまり見られない」という。
河合准教授の専門は「客家」研究。広東省や福建省、台湾、香港、東南アジアなどの広い範囲に住み、独自の言語と文化を持つ漢族の一集団だ。彼らは自らの伝統を若い世代へと継承するのに近年、アニメやマンガを活用。伝統的な守り神「石獅子」のゆるキャラが登場したり、客家の女性をキャラ化したりと、独自文化を対外的に宣伝すると同時に次世代の記憶に刻むツールとして用いている。
河合准教授は「ファンが愛着を持ち、景観再生や文化遺産の保護にも結びつく日本に対し、中華圏では行政などの政策的な意図でアイコン(記号)的に位置付けられる傾向が強い」と分析した。
3人によるパネルディスカッションでは、サブカルチャーと既存の文化遺産との関係や、その保全に果たす可能性などを議論した。川村准教授が「『文化遺産は原状そのままで保持しなければいけない』との信仰を近代人は持っている」と指摘すると、河合准教授も「実際には人々は流れの中で伝統を捉え、多少変えたり新たな要素を付加したりしている」と語り、文化遺産の存在を別の角度から認識し直す必要があると訴えた。
飯田教授は「行政や国際機関が認めた価値を受け入れて文化遺産を考えがちだが、制度そのものがバーチャルなもの。自分たちで価値をつくっていかないと」と議論を締めくくった。
(編集委員 竹内義治)
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December 13, 2019 at 05:01AM
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